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多焦点眼内レンズを用いた老視治療

老眼治療(手術)

老眼とはどういう状態?

当院では、多焦点眼内レンズによる老眼治療を行っております。
複数の距離にピントが合う多焦点眼内レンズを眼内に挿入する手術を行うことで、老眼の見え方を改善し、日常生活を裸眼で過ごすことが可能になります。
またこの手術は、老眼と一緒に白内障を治療することができます。

老眼とはどういう状態?

通常、私たちが遠くを見る時には水晶体が薄くなり、近くを見る時には水晶体が厚くなります。
しかし、30歳を過ぎた頃から、水晶体は徐々に硬くなります。40歳になるとその変化はより大きくなり、ピントが合いにくくなります。このような調節機能の低下を、老眼と言います。具体的には、以下のような症状が見られます。

  • 近い距離の細かい文字が見えにくい、読めない

  • 近くを見ていて、遠くへと視線を移した時にぼやける(ピントが合うまでに時間がかかる)

  • 夕方になると見えにくくなる、目が疲れる

また、主に加齢を原因とする白内障の患者さんも、40代くらいから増え始めます。

多焦点眼内レンズについて

多焦点眼内レンズについて多焦点眼内レンズとは、眼内に挿入する「眼内レンズ」のうち、複数の距離にピントを合わせることのできるレンズです。“白内障手術で使うレンズ”ということでご存じの方の方が多いかもしれません。
多焦点眼内レンズは種類が豊富で、ピントが合う距離も2~5カ所とさまざまです。より見えやすい距離にも違いがあるため、患者さんのお仕事や趣味などのライフスタイル、ご希望などを考慮して選択することで、快適な裸眼生活を送ることが可能です。ただ、多くの方が眼鏡なしの裸眼生活を取り戻しているとはいえ、手術後の見え方には個人差がありますので、眼鏡が必要になる場面が出てくることもあります。また、ハローグレア、コントラスト低下が起こることもあるため、医師とよく相談した上で、治療の判断、レンズの選択をすることが大切です。
※多焦点眼内レンズと対になるのが、単焦点眼内レンズです。こちらはある1つの距離にのみピントが合うレンズであるため、老眼治療には適しません。

多焦点眼内レンズが向かない人とは?適応の対象

多焦点眼内レンズによる老眼治療は、必ずしもすべての方におすすめできる治療ではありません。
最終的には医師と相談した上での判断となりますが、一般的に向いている人・向いていない人の特徴を、それぞれご紹介します。

多焦点眼内レンズが向いている人

眼鏡やコンタクトレンズの管理・装用を面倒に感じる

手術で多焦点眼内レンズを挿入することで、ほとんどの場合、日常生活を裸眼で過ごすことができます。特に、眼鏡のかけ外しやコンタクトレンズのケア・着脱が面倒という方、スポーツをする方などにおすすめです。

ハローグレア、コントラスト低下などの副作用が許容できる

副作用として起こり得る、光が滲んだり光のまわりに輪が見える「ハローグレア」、色の鮮明度が落ちる「コントラスト低下」が気にならない(神経質でない・慣れそう)という方にも、多焦点眼内レンズをおすすめできます。ただ、近年は上記の副作用が起こりにくい多焦点眼内レンズも登場しています。

乱視を矯正したい

多焦点眼内レンズの中には、乱視を矯正できるレンズがあります。老眼や白内障の症状と共に、乱視も改善したいという方にとって、多焦点眼内レンズを使った手術は有力な選択肢の1つとなります。

多焦点眼内レンズが向かない人

緑内障や加齢黄斑変性などの眼疾患がある

緑内障、加齢黄斑変性など、白内障以外の眼疾患がある場合、多焦点眼内レンズの効果が十分に得られないことがあります。

見え方に強いこだわりがある

見えにくさを感じた時、ハローグレアやコントラスト低下が現れた時に強いストレスを感じそうという場合には、多焦点眼内レンズの選択をおすすめしないことがあります。

夜間に運転することが多い

お仕事などで夜間の運転が頻繁にある場合には、ハローグレアへの懸念から、多焦点眼内レンズをおすすめしないことがあります。

白内障ではない・ほとんど進行していない

白内障がない、あるいはほとんど進行していないという場合には、多焦点眼内レンズの挿入によって、かえって見えづらさを感じることがあります。

多焦点眼内レンズのメリットとデメリット

白内障や老眼の改善に使用する多焦点眼内レンズには、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

眼鏡・コンタクトレンズなしで快適に生活できる

複数の距離にピントが合うため、多くの場合、眼鏡やコンタクトレンズを装用せずに、日常生活を快適に過ごすことができます。

仕事・趣味などに合わせてレンズのタイプを選択できる

ピントの合う距離が異なる多種多様なレンズのご用意があります。仕事・趣味などのライフスタイルに合わせて、患者さんに合った多焦点眼内レンズを選択できます。

白内障・老眼・乱視を同時に改善・矯正できる

多焦点眼内レンズは、白内障・老眼の症状を一緒に改善することが可能です。またレンズの種類によっては、乱視の矯正も可能です。

デメリット

ハローグレア・コントラスト低下が起こりやすい

単焦点眼内レンズと比べると、ハローグレアやコントラスト低下といった副作用が起こりやすいレンズとなります。ただ近年では、これらの副作用が起こりにくい多焦点眼内レンズも開発・販売されています。

見え方に慣れるまで時間がかかる

複数の距離に同時にピントが合うがゆえ、違和感が生じ、慣れるまでに多少の時間(1ヶ月~半年程度)がかかることがあります。また、決して20代の頃のような見え方まで回復する治療ではありません。

治療費が高額になる

多焦点眼内レンズを使った手術は、選定療養または自費診療となります。保険適用となる単焦点眼内レンズを選んだ場合と比べると、患者さんの経済的なご負担は大きくなります。

多焦点眼内レンズの術後の見え方

多焦点眼内レンズの術後の見え方手術後、当院を出られる頃には、ある程度見えるようになっています。その後、「よく見えるようになる」のは、翌日~7日後くらいが目安となります。
ただ、多焦点眼内レンズは、複数の距離に同時にピントが合うため、その違和感に慣れるまで1ヶ月~半年程度の期間が必要になります。

当院で取り扱う
多焦点眼内レンズの種類

多焦点眼内レンズの分類

回折型

同心円状の段差構造のレンズであり、瞳孔の大きさの影響をほとんど受けません。
近くや遠くがよく見えます。ただし、コントラスト低下が比較的起こりやすくなります。

屈折型

屈折力に差のある部分が、同心円状に交互に繰り返されるレンズです。
特に、遠くがはっきり見えます。ある程度瞳孔が大きい人は、近くもよく見えます。ただし、回折型よりもハローグレアが起こりやすくなります。

プログレッシブタイプ

“正と負の球面収差”を利用したレンズであり、近くから中間距離、遠くまでスムーズに見えます。
より質の高い見え方をご希望の方におすすめです。

多焦点眼内レンズの主な種類

テクニスシナジーオプティブルー

テクニスシナジーオプティブルー近方から遠方まで、連続してピントが合う多焦点眼内レンズです。
テクニスマルチフォーカル、テクニスシンフォニーの2つの“いいとこ取り”をしたレンズであり、夜間を含め良好な見え方が維持されます。ハローグレアも抑えられます。
※選定療養

Clareon PanOptix Trifocal(クラレオン パンオプティクス トリフォーカル)

Clareon PanOptix Trifocal(クラレオン パンオプティクス トリフォーカル)世界的に高いシェアを誇り、特に欧州で高評価される3焦点眼内レンズです。
「ENLIGHTEN™光学テクノロジー」が搭載され、40cm・60cm・遠方のうち、60cmがピントのピークとなっているため、40~80cmがスムーズによく見えます。
※選定療養

Clareon Vivity(クラレオン ビビティ)

Clareon Vivity(クラレオン ビビティ)近方から中間距離、遠方と実用的な見え方を再現した多焦点眼内レンズです。
「X-WAVEテクノロジー」が採用された波面制御型IOLであり、ハローグレアが大幅に軽減されています。夜間の運転をする人にもおすすめです。
※選定療養

TECNIS multifocal(テクニスマルチフォーカルシングルピース)

TECNIS multifocal(テクニスマルチフォーカルシングルピース)近方と遠方にピントが合うレンズであり、瞳孔の大きさの影響をほとんど受けません。
近方については、33cm・42cm・50cmから距離を選べます。
※選定療養

Fine vision(ファインビジョン)

Fine vision(ファインビジョン)近方と中間距離、遠方にピントが合う、3焦点眼内レンズです。
近方と遠方、中間距離と遠方という2つの2重焦点レンズを組み合わせた構造で、ハローグレアが起こりにくくなっています。乱視用もあります。
※選定療養

mini well(ミニウェル)

mini well(ミニウェル)近方から中間距離、遠方とスムーズに見ることのできる、世界初のプログレッシブタイプレンズです。
従来のレンズと比べると、ハローグレアが抑えられます。
※自由診療

インテンシティー

インテンシティー近方・近中・中間・遠中・遠方という、5つの距離に焦点が合うレンズです。
多焦点眼内レンズの中でもっとも光エネルギーロスが抑えられ、コントラスト低下の起こりにくいレンズと言えます。
特に40cm以降の距離において、良好な見え方が維持されます。
※自由診療

多焦点眼内レンズを検討中の患者さんへ

当院は、最新の機器を用いた検査、医師や視能訓練士の丁寧なヒアリングによって、患者さんにとっての理想的な眼内レンズ・治療が提供できる体制を整えております。
しかしながら、たとえ最新の多焦点眼内レンズを使用したとしても、20代や30代の頃のような、何の問題もないクリアな見え方が完全に取り戻せるわけではないことにご留意ください。治療の限界についても予めご理解いただくことが、より満足度の高い治療へとつながります。当院といたしましても、患者さんお一人おひとりに対して最大限の情報提供を行い、ご理解・ご納得をしていただけるよう、努力して参ります。
当院の目的は、患者さんに多焦点眼内レンズを選んでいただくことではなく、最良の治療と巡り会っていただくことです。場合によっては、単焦点眼内レンズ、あるいは他の治療法・矯正方法をご提案することもあります。

多焦点眼内レンズの費用

多焦点眼内レンズには、保険が適用されません。選定療養または自費診療の扱いとなります。

レンズ形状 レンズ形状 レンズ形状 レンズ形状 レンズ形状 レンズ形状 レンズ形状 レンズ形状 レンズ形状
名称 テクニスシナジー
オプティブルーJ&J社
(アメリカ)
テクニス
オデッセイVB
SimplicityJ&J社
(アメリカ)
テクニス
PureSee
オプティブルー
SimplicityJ&J社
(アメリカ)
Clareon PanOptix Trifocal
クラレオン
パンオプティクストリフォーカル
アルコン社
(アメリカ)
Clareon Vivity
クラレオン
ビビティ
(アメリカ)
Vivinex Gemetric
HOYA株式会社
(日本)
FineVision
ファイン
ビジョン
(ベルギー)
mini well READY
SIFI MedTech社
(イタリア)
インテンシティー
Hanita Lenses社
(イスラエル)
光学部デザイン 回折型 回折型 非回折型 回折型 波面制御型 回折型 回折型 プログレッシブ
タイプ
回折型
乱視矯正 あり あり あり あり あり あり なし あり あり
ピント 遠方~近方
(連続焦点)
遠方~近方
(連続焦点)
遠方~中間 遠方と中間と近方 遠方~中間 遠方と中間と近方 遠方と中間と近方 遠方~中間 遠〜近方まで
5焦点構造
近見焦点距離 33cm 40cm 50cm 60cm・40cm 60cm 40cm 30cm 40cm 40cm
読書
PC
ゴルフ
夜間運転
グレア・ハロー あり 少ない ほぼ無し あり ほぼ無し やや少ない あり ほぼ無し 少ない
説明文 遠方~近方まで、自然な見え方で特に読書や手元での作業が多い方におすすめです。 テクニスシナジーよりハローグレアを抑えて夜間の運転がしやすくなっています。遠方~中間の見え方を重視する方におすすめです。 回折を用いない構造で、単焦点眼内レンズと同程度までグレア・ハローを軽減。遠方から実用的な近方距離まで優れた見え方を実現しています。 遠方、中間、近方に焦点が合うので日常生活でのTV鑑賞、PC作業、料理など快適に行うことができます。 単焦点眼内レンズと同程度まで、ハローグレアを抑えており、遠方~中間が見やすいため、運転やスポーツをする方におすすめです。 国内初の多焦点眼内レンズです。遠方、中間、近方とバランスの取れた見え方を希望する方におすすめです。 遠方と中間と近方に焦点が合うレンズ、中間~近方の見え方を重視する方におすすめです。 ハローグレアを抑えているので夜間の運転やゴルフ、PC作業など、遠方~中間の見え方を重視する方におすすめです。 遠方~40cmまで、連続してスムーズに見える新世代の5焦点眼内レンズです。ハローグレアも少なく、自然な見え方を希望する方におすすめです。
選定療養 選定療養 選定療養 選定療養 選定療養 選定療養 選定療養 選定療養 自由診療 自由診療
費用(税込み) 273,900円
(税込)
304,700円
(税込)
304,700円
(税込)
304,700円
(税込)
304,700円
(税込)
304,700円
(税込)
304,700円
(税込)
550,000円
(税込)
550,000円
(税込)
乱視用費用(税込み) 295,900円
(税込)
353,100円
(税込)
353,100円
(税込)
353,100円
(税込)
353,100円
(税込)
353,100円
(税込)
乱視用なし 583,000円
(税込)
583,000円
(税込)

多焦点眼内レンズについて
よくある質問

多焦点眼内レンズは保険適用ですか?

2020年より、健康保険と自己負担を組み合わせた「選定療養」という医療サービスが開始されています。これにより、以前よりご負担少なく、多焦点眼内レンズの手術を受けていただけます。ただし、選択されるレンズによっては自由診療(全額自己負担)となります。

眼内レンズは何年持ちますか?

眼内レンズは、半永久的に使用できます。度数に大きなずれが生じた時など、限られたケースにおいてのみ、レンズの交換が行われます。よほどのことがない限り、生涯ご使用いただけるとお考えください。

多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズはどちらがいい?

患者さんの見え方へのお考え・ご希望、ライフスタイルによって異なります。近方~遠方までさまざまな距離を裸眼で見たい方、スポーツ愛好家の方には、多焦点眼内レンズをおすすめします。一方で、ある特定の距離をしっかりと見たい方、ハローグレア・コントラスト感度の低下などが気になる・仕事で困るといった方には、単焦点眼内レンズをおすすめします。

多焦点眼内レンズの適応年齢は?

特に年齢による制限はございません。加齢以外の原因で白内障になり、手術を受け多焦点眼内レンズを使用しているお子さんもいらっしゃいます。

多焦点眼内レンズは遠くが見えにくいですか?

多焦点眼内レンズは、近方や遠方といった複数の距離にピントが合いやすいレンズです。そのため、特に遠方が見えにくいということはありません。ただ、レンズによって強みのある距離は異なりますので、どんな距離をしっかり見たいかをお伝えいただければ、それに適したレンズをご提案します。

多焦点眼内レンズに慣れるまでにはどのくらいかかりますか?

すぐに慣れるという方もいれば、1~3ヶ月かかったという方もいます。個人差があり、事前にどれくらいで慣れるかを明確にご提示することは難しいのが実情です。ご不安はできる限り解消できるようお話しいたしますので、まずは一度、ご相談ください。